FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年6月3日放送

郷土を愛し、地産地消の活動に取り組んでいる『NPO法人あわてんぼう』の理事長、松崎壽和子さんが今回のお客様。
『あわてんぼう』の拠点は旧大山田の阿波地区。
閉園した保育園を活用して山里レストランをオープンしました。
地域のために頑張るみなさんが、地域のことを考えて始まった事業は、活動が認められ、平成28年度農村漁村女性・シニア活動表彰において最優秀賞となる『農林水産大臣賞』を受賞されました。
三重県内で、最優秀賞を受賞するのは初めてのことです。

わてんぼうの名前の由来

伊賀市の一番東、津に一番近い地域が阿波地区です。
『あわ』は『阿波』で「阿波を展望する」という意味で『あわてんぼう』という名称となりました。
たいていの方が「慌て者が多い」とイメージするようですが、「阿波地域の将来を見通しての活動をしよう」との思いからでした。

 

わてんぼう設立のきっかけ

平成20年に阿波地域の市民センターが完成しました。
私が現在会長を務める協議会組織の副会長に就任したのが、平成24年です。
その頃から、所属女性12〜3人が、グループとして手づくりのいろいろなことを企画して取り組みました。
男性目線ではイベントの企画に人が寄らないので、女性目線を加えて、単純に言うと、『食』の部門を組み込んだんです。
例えば、お硬い総会であっても、少しのお休みタイムにスイーツを用意するとか、家庭するおもてなし程度ですが、お菓子作りや食べ物をイベントに組み込むとか。
それらをボランティアでやっていたのがそもそもの活動のスタート。
『あわてんぼう』の施設はもともと、平成25年3月に閉園になった保育園。
その2年ほど前、園児が9名になった時点で合併するという話が出て、その跡地をどうするかを住民の賛否が問われてきました。
本来は解体予定でしたが、私たちボランティアが、イベントで作ったお菓子や料理を褒められたことで、やる気に火がついたんですね。
そこでここを食の場にしようと思い付き、いろいろなことに取り組んできました。

 

りたいことの4つの柱

・高齢者のみなさんに地域の手づくりのお弁当を届けること
・飲食店のない阿波地域で、食べて貰える場所(レストラン)を作ること
・運動会や敬老会など地域を挙げての昼食を、他地域からの買い取りではなく自分たちで作ること、イベントの協賛
・ウェブサイトやブログやFacebookなどを通じての情報発信

中でも、私たちの世代は情報発信が一番苦手。
でも4つの柱を掲げてやっていこうと、ビジネスプランに盛り込みました。
だんだん事業年数が経つと、少しずつ特化してくる分野があります。
今は地域のお弁当に半分以上力を入れています。
待ってくださっている高齢者の方がいてくれ、手づくりのお弁当が口コミで広がっていっています。
レストランは縮小した分、年に3〜4回開催しているバイキングで、集客しています。
それが今見えてきた、事業所の最近のあり方です。
さらに可能であれば、阿波地区に宿泊できる場所も作りたいですね。

 

域の不安をなくすことが、『あわてんぼう』に求められていること

みなさんから求められていることをしていこうと考えています。
阿波地域に食べる所がないこと、生鮮食料品店が近くにないということ。
これらのことが地域の人たちの不安につながっていますが、私たち『あわてんぼう』にお弁当があるということだけで、安心してもらえます。
また高齢化していても元気なお年寄りが、作ってはいるけど市に出すほどの量ではないお野菜を『あわてんぼう』に持ち込んでくれています。
これら、地域の農家さんとのコミュニケーションも、今では大切なつながりになっています。
農家さんには最初、農家契約をお願いしに行ったところ、先方から、
「そんな契約は困るわ。
私たちはあまった野菜を納めさせてもらうだけ。
みんなに食べてもらえたらええんや」
と、とても優しいお言葉をいただきました。
そこで仕組みの名前を『フレンドファーム』と名付けました。
お互い食べてもらえたらいい、作らせてもらえたらいい・・・という優しい間柄です。
通常であれば、農家さんが納品してくれた野菜のお通い箱を、現金払いをするのが本来ですが、その代わりに『お弁当券』を発行して、精算しています。
1週間に1回お野菜を納入し、1ヶ月で4〜5箱入れてもらうと、お弁当券を4〜5枚発行しています。
お野菜の対価は現金ではなくお弁当券なんです。
それをもらった農家さんは、翌月お弁当を注文してくれます。
私たちも助かる、農家さんも作り甲斐がある・・・フレンドファームのシステムに大変助けられています。

 

きな事業をするよりも待ってくれている高齢者へのお弁当が大切

93歳のおばあちゃんがデイサービスに行って、
「私は『あわてんぼう』のお弁当を食べてるんやわ」
と、90歳のおばあちゃんにお話したそうです。
その90歳のおばあちゃんが、
「私もだんだん作るのが面倒くさくなってきたので、そんなに美味しいなら『あわてんぼう』のお弁当を取ろか」
という会話があったそうで、その2人が帰った後、デイサービスから電話がかかってきました。
私はすぐに90歳のおばあちゃんの家に行き、その日のお弁当をお見せしたところ、すぐに注文してくれました。
こういう口コミが多く、今では待ってくださっている方が、地域全体でひろまってきたので、ありがたいと思っています。

また他のお話ですが、高齢のご夫婦の旦那さんが突然死されました。
息子さんたちが少し遠くに住んでいるのは知っていたので、様子をうかがっていたところ、雨戸はしばらく閉まったままでした。
そして雨戸が開いたその日にすぐ、私はそのお宅を訪ねました。
おばあさんに今朝、何を食べたか聞いたところ、残り物と。
お昼はどうするのかさらに聞いてみると、息子が何か考えてくれるかな、と。
不安な感じでしたので、『あわてんぼう』のお弁当を渡し、これを食べて元気になってくださいと伝えたところ、おばあさんが泣いて、
「数が1つ減りますが、明日からまた毎日お願いできますか」
と言われました。
私は戻ってすぐ、仲間にこのことを伝えました。
これが『あわてんぼう』の活動の原点です。
こうやって待ってくれている人のために、がんばってお弁当作りをしていこうと。
私たちは事業を拡大していくのではなく、待ってくださっている方のために1個1個増やしていくのがうれしことなんです。

仲間は今現在18名。
親の介護や孫育て、家族内の病気の看護、老人クラブの役をしていたり地域のボランティアを抱えながら、できない日のやりくりやつらいことの対応など、すべて仲間で乗り越えて、今日の日があるのかなと思っています。